食品表示検定 熊本県産アサリ産地偽装を受けて
上級食品表示診断士の管理人が熊本県産アサリの産地偽装を受けて、生鮮食品「水産物」の「原産地表示」ルールについて確認、解説していきたいと思います。※2022年3月30日付の食品表示基準Q&A改正内容含む
生鮮食品とは?
生鮮食品とは?
「加工食品及び添加物以外の食品」になります。
具体的には、生の野菜、果物、精肉、鮮魚等であり、「農産物」「畜産物」「水産物」に分類されます。
アサリは水産物ですね。
この生鮮食品は、「一般用生鮮食品」と「業務用生鮮食品」に分けられます。
一般用生鮮食品とは、
「加工食品の原材料となるものを業務用生鮮食品といい、それ以外のもの」とされており、いわゆるスーパー等で売られており、一般の人が家で食事を作る為に買って帰る生野菜や生のお魚などのことをいいます。
一方で、業務用生鮮食品とは、
「加工食品の原材料となるもの」とされています。食品メーカー等で加工に使われる原材料であり、具体的には、レトルトカレーの中に入っているじゃがいもやにんじんが該当します。
生鮮食品の「原産地」表示義務
一般用生鮮食品の「原産地」表示義務
一般用生鮮食品は、「原産地」の表示は必ずしなければいけません。
ただし、次のような場合には、「原産地」表示をする必要はありません。
- 生産した場所で直接販売する場合
- 不特定若しくは多数の者に対して譲渡(販売を除く。)する場合
- 設備を設けてその場で飲食させる場合
要するに、売らずに人にあげる場合や外食店では原産地表示の必要が無いということになります。
さらに、水揚げした港で一般消費者に直接販売する場合も、原産地表示は必要無いということになります。
業務用生鮮食品の「原産地」表示
業務用生鮮食品の場合、「原産地」表示が省略できる場合もあります。
最終製品において、原料原産地名の表示義務がない原材料となることが確実な業務用生鮮食品については、「原産地」の表示は省略できます。
一方で、最終製品の原料原産地表示の正確性を確保するため、最終製品において、原料原産地表示義務の対象原材料(重量割合上位1位等)となる業務用生鮮食品については、「原産地」表示の義務があります。
また、販売先の使用用途が不明な場合も、「原産地」表示が必要になります。
水産物「アサリ」の原産地表示の方法
国産品と輸入品の「原産地」表示の方法
今回産地偽装問題になっているアサリについては、生鮮食品の「水産物」に該当します。
この「水産物」の原産地表示はどのように表示すればよいか?
「国産品」と「輸入品」に分けて表示方法を見ていきましょう。
漁獲した水域名か養殖場がある都道府県名
※水域名による表示が困難な場合は、水揚港名、又は水揚港がある都道府県名でも可
※水域名に水揚港名、水揚港が属する都道府県名の併記可
表示例:「あさり(熊本県産)」「あさり(千葉県沖)」「あさり 天草灘(熊本県)」
※「あさり(近海)」、「あさり(遠洋)」は不適切となります。
原産国名
※水域名の併記可
表示例:「あさり(中国産)」「あさり 中国(黄海)」
国産品と輸入品の「原産地」の決め方
(注意)2022年3月30日付で食品表示基準Q&Aが改正されました!
【改正内容】
①成貝(大人のあさり、通常我々が食べている大きさ)の状態で輸入した場合は、(畜養期間に関わらず)輸出国が原産地になる。
②あさりの稚貝(あさりの赤ちゃん)を輸入し、1年半を超えて国内で育成(※畜養ではない)し、その根拠書類等を保存している場合には、国内で育成した産地を原産地として表示する。
【改正前】
水産物を2か所以上で蓄養した場合、
最も蓄養期間の長い場所(最長の蓄養地)を原産地として表示していた。
「畜養」の定義
出荷調整用その他の目的のため、水産動植物を短期間一定の場所に保存すること
畜養の期間は貝類の全体の生育期間には含まれない
「育成」の定義
給餌・無給餌に関わらず、人工手段を加え、当該貝類の発生又は成育を積極的に増進し、その個体の数又は量を増加させること(養殖を含む)
今回の改正は、「畜養期間に関係無く」がポイントで、輸出国が原産地になる。ただし、稚貝であれば、国内で1年半を超えて育成して、その根拠書類等を保存すれば、国内で育成した産地を原産地表示してね、ということになります。
では、次のような場合はどうなるでしょうか?
放流した成貝の輸入アサリと国産のアサリが海浜中で混在し、掘り揚げた際に仕分けることが困難な場合は、どのように原産地を表示すればよいか?
放流した輸入アサリと国産のアサリが海浜中で混在し掘り揚げた場合は、両方の産地を重量順に表示することとなりますが、仕分けが困難な場合は、漁獲区域の輸入アサリの放流量と国産アサリの漁獲量のデータを照らし合わせ重量比率を算出する方法などが考えられます。
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